先日、TDRに関するある話題がSNSを中心に盛り上がりを見せました。
10代〜30代の利用者が激減しているようです。
若者のディズニー離れが進む 10~30代の利用者は約10%減 TDR知識王が語る分岐点「大人料金が1万円を超えた時」
一説にはワンデーパスポート代の値上げの影響が大きいという見方もあるようですが、本当にそれだけなのでしょうか。
チケット代の高騰による"若者離れ"はあくまでも理由の1つに過ぎない
ワンデーパスポートがダイナミックプライシング制の導入の結果、GW・年末年始などのハイシーズンには大人1名で10,900円となります。
ついこの間まで7,000円台〜8,000円台でしたが、新規アトラクション・テーマポートの出現による非常に大きな投資の影響もあり、ワンデーパスポートの価格はこの数年で急激に上昇しました。
日本経済が低成長時代を続けて、かつ給与所得が増えない今の時代、物価だけが上がる状況が続けば、遊びに使うお金も削るしかないので、チケット代が高くなったことは"若者離れ"の理由の1つとして挙げられるでしょう。
しかし、本当にそれだけが原因ではないと考えます。
- 慢性的な混雑
- 価値観の多様性
- 魅力あるコンテンツが本当にあるかどうか
特にコロナを経験して以降、なかなか自由に外にも出歩けない日が続く中で、NetFlixやDisney+などの配信コンテンツの面白さに気づいた方も少なくはないでしょう。
どんなにお金を払っても月に2,000円以下で過去の映画や独占配信を見放題になれば、そちらに時間を費やす方も多くなるでしょう。
可処分所得と可処分時間の奪い合いがレジャー産業の常なることでしょうが、TDRはそこに負けているということになります。特に若い世代はユーチューブやSNSなどに使う時間も多いので、ベッドルームでダラダラしながら刺激的な映像が楽しめるならば、そっちの方がいいだろうと考えるのも無理はありません。
特に面倒臭いことが嫌いならば、なおのことでしょう。
そして常に混雑しているTDR。
スタンバイパスやディズニープレミアアクセスなどの発給も進めてはいるものの、結果的にはそれすらも取れない状況が続きます。いつも瞬殺だとすると、期待感を持ってテーマパークに足を運んだ人はどんな感想を持ってその日1日を過ごすのでしょうか。
高いお金を払っても、抽選すら当たらない現状。加えてスタンバイパスやディズニープレミアアクセスなども瞬殺状態。さらには欲しいグッズも中華系の転売目的の客に大量購入されてしまうなど、ゲスト軽視の傾向が続くTDRです。
SNSは良くも悪くも情報が可視化されますので、受け手となる若手のゲストは「こんなだったら行かなくてもいいんじゃないかな。」という感想を持って他に行くのは自然なことのように思えます。
暑い中、2時間もアトラクションに並ぶならば、空調の効いた空間で2時間楽しい映画を見た方が遥かに有意義ではないでしょうか。
OLCの顧客選別は顧客軽視と同義語
OLCは客単価を上げたい考えが常にあります。TDRはどうしてもスペースが限られておりますので、1名あたりの客単価を上げたいのは経営戦略上当然の選択といえましょう。
また、OLCは上場企業でもありますので、コスト削減にも十分気を配り、株主配当もしっかりと行うことで企業としての価値を高めるための施策には余念がないと常に見ております。
先般オープンしたファンタジースプリングスも隣接するホテルが1泊で30万を超えるということが話題になっておりますが、高級路線に切り替えることで、カジュアルに来る場所ではなく「ハレの場所」として来園してもらうことにしたようです。結婚記念日だったり誰かの誕生日だったり、です。
1年に1回家族連れでくるのではなく、複数年に1回の頻度でもいいので、その代わりにホテルに泊まってしっかりとお金を落としてもらう、という方向へ舵を切ったイメージがあります。バケーションパッケージなどの売れ行きもおそらくは好調なのでしょう。
実際にワンデーパスポートの高騰で1年に1〜2回来る客層、特にファミリー層が複数年間隔を空けて来るようになりました。経済事情を考慮に入れれば、そうなることは自明の理ですが、たまにしか来ないゲストの中には、周囲の目などを気にすることなく、横入りや開園ダッシュなどのマナー違反を繰り返し、注意するキャストには悪態をつくなど、現場にかかる負担は大きくなる一方です。
そしてこういう悪目立ちするゲストは面白いくらいにSNSで拡散されてしまいます。
キャストへの同情もあるでしょうが、大半は「こんなクソみたいな客しかいないんだよ、今のTDRには!」という実にネガティブなトーンで発信され、それに対して「いいね!」が驚くほどの数、つけられてしまうという有様になります。それを見ている特に興味関心のない一般人からすれば、「TDRはマナーの悪い人が集まる場所」という認識になってしまっているのかもしれません。
黙って高いお金を払う客層だけを選んだつもりが、結果的に一部の心許ない悪行を働くゲストのために、善良なゲストまでも足が遠のく自体を招いているようです。
また、チケット代が高くなった結果、誰もが楽しめるはずの娯楽施設を、それこそラグジュアリーホテルのスイートルームに宿泊する人しか相手にしなくなった今のTDR。
そもそもディズニーキャラクターはどんな家庭にも浸透しやすく、親しみやすいキャラクラーばかりです。
その彼らに会うために、背伸びしてもなかなか届かない金額じゃないと会えません、というハードルを設けるのは本当にディズニーの世界観が好きなゲストのためになっているのでしょうか。
若い世代の中には、高額な金額を支払わないと遊べなくなったTDRに通うためにパパ活や"立ちんぼ"行為を行うなどしてお金を稼ぐ方もいるようです。側から見たら驚くことばかりですが、決して健全な行為ではありません。(このことがOLCに責任があるとは全く考えません。)
「老人」が増えると、若者は来ない
30代以下のゲストの来園が伸び悩む中、40代以上のゲストの入場数が増えているようです。可処分所得が多いのも大きな理由でしょう。
テーマパークは来園する方の年齢や性別、国籍を問わない自由さがありますが、若い世代から見て年配の方しか来ない場所はどう映るのでしょうか。
大多数の来場者となるゲストの年齢層に合わせたパーク運営になったら、若い世代は足を運ばなくなると思います。
アイドルのコンサートに来たつもりが、出てくる歌手はみんなシニア層の演歌歌手だったら、ゲストとしては期待値が大きく外れる結果となり、2度と足を運ばなくなるでしょう。
TDRの今はまさにそんな感じです。
そして、より刺激的なUSJに足を運ぶ若い世代が増えつつあることも、TDRが保守的な傾向というかコンサバティブな世界観を保つ事に終始していることを考えると、最近の人気のアーティストなどとタイアップするUSJにはそもそもの企画力の段階で負けてしまうのも無理はないのかな、と考えます。
TDRが老人クラブとして機能するならば、それもまた良しです。そういう経営判断もあるでしょう。
しかしながら、向こう100年TDRが運営されることを願うならば、常に新規の顧客、若い世代の取り込みは必須になります。
ジャンボリーミッキーみたいなお遊戯会もTDRの客層には合っているのかもしれませんが、アトラクションもエンターテイメントもバラエティに富み、退園時には目一杯遊び尽くしたという充実感を持って帰路に着く人をどれだけ増やせるのか。
ミッキーマウスを出しておけばなんとかなる、という商法はもう終わりだと思います。
消費者も馬鹿ではありません。足元を見ているんだと思います。
メディアコントロールが目立つOLC
あるメディアに対して一時期「混雑」という言葉を使うな、とOLCサイドが各メディアに対して強くプレッシャーをかけたことがあるようです。
混雑をしているのは、周知の事実です。
多くの来場があって、結果アトラクションもお店も「混雑」するのは事実なので隠す必要などありません。
ちょっとでもありのままのパーク事情を書こうとするメディアに対しては、それこそ取材許可を出さないなどの強硬な姿勢をちらつかせて、結果的にはTDRとしてもOLCとしても注目してほしい一面だけにしかフォーカスさせない姿勢が続いているようです。
情報の受けても馬鹿ではないので、TVやWEBメディアに書いてあることなどを鵜呑みにはしていないと思いますし、むしろメディアがひたすらに隠す内容は、すでにSNSで一般個人に拡散されていることに、もっと敏感になった方が良いかと考えます。
今は既存のメディアよりもインフルエンサーの時代です。そのインフルエンサーも首根っこを掴まされているならば、あとは一般ゲストの本音しか真実を伝えられないような状況になりそうです。
脚色まみれの一方的な都合の良い情報ではなく、1人のユーザー目線で見た情報が遥かに客観性を持つことを若いゲストほど知っています。
OLCの経営層でSNSを使いこなせている方がどれだけいるのかわかりませんが、旧来のメディアのコントロールをしても、インフルエンサーに下駄を履かせても、一般ゲストはお見通しの方が多いと思います。
OLCはゲストに対してアンケートを定期的に取得していますが、その内容が経営にどう反映されているのか、皆目わかりません。年間パスポートを復活させず、いわゆるマニア・オタクを排除することに成功しましたが、新商品グッズが出るたびに中国人の転売目的の人材が列をなして、本当に欲しいゲストが何も買えないまま帰宅するような状況を見過ごすまま、それこそ売り切れてよかったくらいにしか思えないのでしょうから、ゲストもかなり馬鹿にされているようなものです。
OLC復活の道筋はあるのか?
経営的には万全の体制なのでしょう。クルーズ船も就航させるので、OLCとしては向こう10年くらいの経営ビジョンは描けているでしょうし、採算も確保できるものと考えているでしょう。
少子高齢化が進む中、今後の来場者動向をどう捉えて今後の投資を検討しているのか、わかりかねますが、TDRに閑古鳥が鳴く日もそう遠くはないと考えております。既にUSJも頑張っていますし、新しいテーマパークも増えてきております。
中国の政局が気になるところとはいえど、「より楽しめるもの」がTDRよりも上海や香港にあれば、アジアの客層を中心により楽しめる方向に進むのではないかと考えます。
OLCの今後の成功はクルーズ船次第になると思いますが、夏場の過酷な天候、自然災害の多い日本でどう集客を続けられるのか。ここも大きなボトルネックになるような印象があります。
いずれにしても他のテーマパークもOLCにはないものを全面的に打ち出して、「打倒OLC、打倒TDR」を狙っているので、OLCもディズニー社からのライセンスありきのビジネスに依存するばかりではなく、もっと他にはないものを独創できる企業体質にならないと、先がないのではないのではないでしょうか。
USJも立役者の森岡氏は40代で大きな仕事を成し遂げました。OLCのトップはやっと60代が就任しました。最高議長の存在は間違いなく大きいのでしょうが、現場に近いところで仕事をする30代〜40代をもっと重用して大人も子供も楽しめるテーマパークを作っていくべきではないでしょうか。
ワンデーパスポートの価格上昇は、確かに"若者離れ"の一因になったのは間違いないことですが、それ以前にも蓄積されていた"若者離れ"となりうる要因は着実にあったのです。そこに目を向けないならば、クルーズ船を就航させても成功裡に終わることなどはないでしょう。
多様化する価値観、そしてそれを受容する社会が加速化する中、今のままで良いなんてことはありません。国内(TDR)に見切りをつけて海外に出ていく人も出てきているようです。こっちの方が本場のディズニーで楽しい、と。
OLCも今でこそ、数字は良いのでしょうが、その数字がいきなり落ちる要素はかなり多くはらんでおります。クルーズ船就航は間違いなく攻めの一手なのでしょうが、この攻めの一手が功を奏する可能性は未知数です。国内外に強い強豪がおります。そんな中で、「自社コンテンツ」がないOLCはどう対抗するのか。
今後のOLCの動きに注視しつつ、TDR以外にも楽しいことがあるという方は、他に楽しめることを優先して遊ぶことをお勧めします。TDRやディズニーコンテンツこそが絶対ではないですし、ディズニー好きならばTDR以外にも楽しめる場所とコンテンツはたくさんありますので。